タイトルにありますが、技術士のコンピテンシーの一部が更新されました。
技術士筆記試験や口頭試験を受ける上で影響するのではないかということで各コンピテンシーの内容と違いと想定されることを考えてみたいと思います。
2023年2月15日に記事を公開しますが、情報が更新され次第、記事の内容を更新したいと思います。
背景
以下、コンピテンシーの詳細を説明する上での背景を原文ベースに記載してます。
技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)については、国際エンジニアリング連合が定める「修了生としての知識・能力(GA; Graduate Attributes)と専門職としてのコンピテンシー(PC; Professional Competencies)」に準拠することが求められている。
持続可能な開発目標(SDGs)や多様性、包摂性等、より複雑性を増す世界の動向への対応や、データ・情報技術、新興技術の活用やイノベーションへの対応等が新たに盛り込まれた。
「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」をキーワードに挙げて以下に示す。SDGs の達成や Society5.0 の実現に向けた科学技術・イノベーションの推進において更に大きな役割を果たすため、技術士であれば最低限備えるべき資質能力である。
第 11 期技術士分科会における技術士制度改革の検討報告
SDGsやSociey5.0を具体的に明記している点がわかりやすいかと思います。
DXやカーボンニュートラル等も対応できる資質であることも深読みできると個人的には思います。それ以外にもたくさんありますね。。。
すでに多くの部門において、上記関連をテーマにした問題は出題されているのでその傾向が強くなるということでしょう。
コンピテンシーの比較
実際どのように変わったのか、変わっていないのかを改定前後を記載してますので確認していきましょう。
である。
以下の文章の引用:第 11 期技術士分科会における技術士制度改革の検討報告
専門的学識
改定前
・技術士が専門とする技術分野(技術部門)の業務に必要な技術部門全般にわたる専門知識及び選択科目に関する専門知識を理解し応用すること。
・技術士の業務に必要な我が国固有の法令等の制度及び社会・自然条件等に関する専門知識を理解し応用すること。
改定後
・技術士が専門とする技術分野(技術部門)の業務に必要な技術部門全般にわたる専門知識及び選択科目に関する専門知識を理解し応用すること。
・技術士の業務に必要な我が国固有の法令等の制度及び社会・自然条件等に関する専門知識を理解し応用すること。
変化なしです。
問題解決
改定前
・業務遂行上直面する複合的な問題に対して,これらの内容を明確にし,調査し,これらの背景に潜在する問題発生要因や制約要因を抽出し分析すること。
・複合的な問題に関して,相反する要求事項(必要性,機能性,技術的実現性,安全性,経済性等),それらによって及ぼされる影響の重要度を考慮した上で,複数の選択肢を提起し,これらを踏まえた解決策を合理的に提案し,又は改善すること。
改定後
・業務遂行上直面する複合的な問題に対して、これらの内容を明確にし、必要に応じてデータ・情報技術を活用して定義し、調査し、これらの背景に潜在する問題発生要因や制約要因を抽出し分析すること。
・複合的な問題に関して、多角的な視点を考慮し、ステークホルダーの意見を取り入れながら、相反する要求事項(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性等)、それらによって及ぼされる影響の重要度を考慮した上で、複数の選択肢を提起し、これらを踏まえた解決策を合理的に提案し、又は改善すること
背景にもありますが、データ・情報技術をツールとして活用することが追記されてます。
多面的ではなく、多角的な視点ということも気になります。すでに一部の部門で出題されてますが、今後は課題の観点は多角的に捉える必要があると考えます。
多面的と多角的の違いは定義としてはありますが、多角的となれば、類似の観点での課題抽出は減点対象になる可能性があります。
マネジメント
改定前
・業務の計画・実行・検証・是正(変更)等の過程において,品質,コスト,納期及び生産性とリスク対応に関する要求事項,又は成果物(製品,システム,施設,プロジェクト,サービス等)に係る要求事項の特性(必要性,機能性,技術的実現性,安全性,経済性等)を満たすことを目的として,人員・設備・金銭・情報等の資源を配分すること。
改定後
・業務の計画・実行・検証・是正(変更)等の過程において、品質、コスト、納期及び生産性とリスク対応に関する要求事項、又は成果物(製品、システム、施設、プロジェクト、サービス等)に係る要求事項の特性(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性等)を満たすことを目的として、人員・設備・金銭・情報等の資源を配分すること。
変化なしです。
評価
改定前
・業務遂行上の各段階における結果,最終的に得られる成果やその波及効果を評価し,次段階や別の業務の改善に資すること。
改定後
・業務遂行上の各段階における結果、最終的に得られる成果やその波及効果を評価し、次段階や別の業務の改善に資すること。
変化なしです。
コミュニケーション
改定前
・業務履行上,口頭や文書等の方法を通じて,雇用者,上司や同僚,クライアントやユーザー等多様な関係者との間で,明確かつ効果的な意思疎通を行うこと。
・海外における業務に携わる際は,一定の語学力による業務上必要な意思疎通に加え,現地の社会的文化的多様性を理解し関係者との間で可能な限り協調すること。
改定後
・業務履行上、情報技術を活用し、口頭や文書等の方法を通じて、雇用者、上司や同僚、クライアントやユーザー等多様な関係者との間で、明確かつ包摂的な意思疎通を図り、協働すること。
・海外における業務に携わる際は、一定の語学力による業務上必要な意思疎通に加え、現地の社会的文化的多様性を理解し関係者との間で可能な限り協調すること。
こちらにも情報技術と記載があります。明確な情報提供方法として、情報技術を活用することはすでに必須ではないかと考えてます。使い方を間違うと不正にもつながるので、正しく使うことが重要です。
技術者倫理
改定前
・務遂行にあたり,公衆の安全,健康及び福利を最優先に考慮した上で,社会,文化及び環境に対する影響を予見し,地球環境の保全等,次世代にわたる社会の持続性の確保に努め,技術士としての使命,社会的地位及び職責を自覚し,倫理的に行動すること。
・業務履行上,関係法令等の制度が求めている事項を遵守すること。
・業務履行上行う決定に際して,自らの業務及び責任の範囲を明確にし,これらの責任を負うこと。
改定後
・業務遂行にあたり、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した上で、社会、経済及び環境に対する影響を予見し、地球環境の保全等、次世代にわたる社会の持続可能な成果の達成を目指し、技術士としての使命、社会的地位及び職責を自覚し、倫理的に行動すること。
・業務履行上、関係法令等の制度が求めている事項を遵守し、文化的価値を尊重すること。
・業務履行上行う決定に際して、自らの業務及び責任の範囲を明確にし、これらの責任を負うこと
ここはSDGsを多少意識しているのでしょうか。また、文化的価値というのは昨今の状況を反映してのことではないかと考えてます。
個人的には試験に大きな影響を与えることはないと考えてます。
継続研さん
改定前
・業務履行上必要な知見を深め,技術を修得し資質向上を図るように,十分な継続研さん(CPD)を行うこと
改定後
・CPD 活動を行い、コンピテンシーを維持・向上させ、新しい技術とともに絶えず変化し続ける仕事の性質に適応する能力を高めること
新しい技術、変化する仕事(生産性、DX、情報技術など)に対応できるようにすることではないかと予想されます。
DXに対応できる人材不足ということもありますので、CPDを通じて能力を高めてほしいということでしょうか。
これは口頭質問でこの観点での回答は必要かと思いますので、これまでの継続研鑽の回答例では完全な加点にはならない可能性があります。
最後に
コンピテンシーが改訂されたことによって、筆記試験の問題背景や設問に影響が出るのではないかと予想されます。
一方で回答しなければいけない本質的なことは変わらないので、大きく勉強方法を変える必要はないと思います。