この記事では、技術士試験の口頭試験での頻出の質問やその傾向について整理していきます。
通常は、コンピテンシーが何かを考えてから質問リストを入手&作成するのが一般的かもしれません。
ただ今回は少し見方を変え、よくある質問内容から、各コンピテンシーに求められるものを逆算して考えてみたいと思います。
基本的には技術士会で求めているコンピテンシーの定義になりますが、それでは分からないという方もいらっしゃると思いますので、質問から紐解いていきます。
はじめに
ここ最近の傾向はコンピテンシー中心の口頭試験になっていると聞きます。
既にご覧になっている方もいらっしゃると思いますが、そのコンピテンシーは以下にまとめられています。
マネジメント
- 業務の計画・実行・検証・是正(変更)等の過程において、品質、コスト、納期及び生産性とリスク対応に関する要求事項、又は成果物(製品、システム、施設、プロジェクト、サービス等)に係る要求事項の特性(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性等)を満たすことを目的として、人員・設備・金銭・情報等の資源を配分すること。
評価
- 業務遂行上の各段階における結果、最終的に得られる成果やその波及効果を評価し、次段階や別の業務の改善に資すること。
コミュニケーション
- 業務履行上、口頭や文書等の方法を通じて、雇用者、上司や同僚、クライアントやユーザー等多様な関係者との間で、明確かつ効果的な意思疎通を行うこと。
- 海外における業務に携わる際は、一定の語学力による業務上必要な意思疎通に加え、現地の社会的文化的多様性を理解し関係者との間で可能な限り協調すること。
リーダーシップ
- 業務遂行にあたり、明確なデザインと現場感覚を持ち、多様な関係者の利害等を調整し取りまとめることに努めること。
- 海外における業務に携わる際は、多様な価値観や能力を有する現地関係者とともに、プロジェクト等の事業や業務の遂行に努めること。
技術者倫理
- 業務遂行にあたり、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した上で、社会、文化及び環境に対する影響を予見し、地球環境の保全等、次世代に渡る社会の持続性の確保に努め、技術士としての使命、社会的地位及び職責を自覚し、倫理的に行動すること。
- 業務履行上、関係法令等の制度が求めている事項を遵守すること。
- 業務履行上行う決定に際して、自らの業務及び責任の範囲を明確にし、これらの責任を負うこと。
引用:日本技術士会
各コンピテンシー
ここからは各コンピテンシーごとに想定される質問をご紹介しながら、どんな内容が聞かれるのか考えていきましょう。
マネジメント
よくある質問リスト
- 普段の業務における管理方法
- コストに関する具体的な管理方法
- 失敗したことと、そこからどうリカバリーしたか
- 部下の指導方法
- 品質や納期を両立するための方法
- 人材育成方法
- PDCAの回し方
これらを見るとマネジメントでは「資源分配」「業務の回し方」が問われています。
通常の業務で、限られた資源や工数の中でどうやって業務を推進していくかという点ですね。
マネジメントというとどうしても管理職の業務というイメージですが、ここでのマネジメントは自分自身の業務も含まれます。その点では役職は全く関係ありません。
普段の業務報告や判断における考え、リカバリーの方策を整理しておきましょう。
コミュニケーション
よくある質問リスト
- 関係者(メーカ)とのコミュニケーション方法
- 業務引継ぎの工夫点
- コミュニケーション方法としての資料の着眼点
- 失敗事例と対策方法
- 専門用語をわかりやすく伝える方法
これらを見ると、コミュニケーションでは「相手への伝え方」が問われています。
電話、メール、報告書、Web会議など伝え方に関するツールは多く存在しますが、相手と円滑に業務を進めるためには、状況に応じてツールを使い分けて効率的に進めることが必要です。
普段のコミュニケーションで工夫している点や意識している点を、口頭でうまく説明しましょう。
またコミュニケーションの手段だけではなく、その中身も重要です。
相手は先生のような超のつく専門家もいれば、一般住民のような方もいます。相手に応じて伝える方法は異なりますので、その点も工夫点として問われることになります。
相手に明確に伝える方法として、何を使って、どんなことをしているのかを整理しておきましょう。
リーダーシップ
よくある質問リスト
- 利害関係はだれか、そしてどんな調整をしたか
- どんなリーダーシップを発揮したか
- 異なる意見に対してどうやって調整をしたか
これらを見ると、リーダーシップでは「相手との調整」が問われています。
業務をすすめていく上で部内、部外(メーカ、研究機関)とどうやって調整するのか。
自分の都合だけでなく、「Win-Win」の関係を作るにはどうやって進めていくのか。
そんな内容になるかと思います。
一般的なイメージであるリーダーシップ(自ら先頭に立って引っ張っていく)とは異なりますので、注意して下さい。
相手の立場を考えて、両者の利害が一致するような業務の進め方に関する質問が想定されます。
評価
よくある質問リスト
- 詳細業務の経済的な評価
- 成果や対策に対する留意点や工夫点
- アウトプットはどんなものだったか
これらを見ると評価では「結果」が問われています。
目標に対して最終的な結果がどうなっているのかという回答になります。
解決策に対する留意点や業務を進める上での工夫点も伝えられるようにしておきましょう。
技術者倫理
よくある質問リスト
- 海外展開するにあたり注意すること
- トレードオフの関係はなかったのか
- 顧客からコスト要求はなかったのか
- 経済性と環境性を両立する方法
- 技術者倫理が高まっていることについて
これらを見ると、技術者倫理では「倫理的な行動」が問われています。
会社として利益を増やすことを目的に活動する中で、上記の質問にあることは必ず起こり得ますが、そのような状況の中で自分自身の技術士、技術者としての行動を問われているのです。
品質重視、安全第一、環境負荷低減、機密漏洩防止など、使命をもって企業活動している方も多いと思いますので、よっぽど変な回答をすることはないかもしれませんが・・・
ご自身が実際に行っている行動や、事例を整理しておきましょう。
継続研鑽
よくある質問リスト
- 何かの委員会に入っているか
- CPD制度を知っているか
- 学会発表経験はあるか
- 特許は何件出願しているか
これらを見ると、継続研鑽では「普段の研鑽の程度」が問われています。
簡単に言うと、日々の業務でインプット&アウトプット活動をしていますか?と言うことです。
もし無い場合は、無いと正直に答えるべき(嘘はついてはいけない)ですが、それで終わりではいけませんのでフォロー回答が必要です。
正直に「入っていません」と答えましたが、それだけでなく「ただし、研鑽のために〇〇学会に入会しています」と回答しました。
→質問には正直に答えながらも、研鑽する姿は見せるべきです。
まとめ
- マネジメント→「資源分配」「業務の回し方」
- コミュニケーション→「相手への伝え方」
- リーダーシップ→「相手との調整」
- 評価→「結果」
- 技術者倫理→「倫理的な行動」
- 継続研鑽→「普段の研鑽」
具体的な質問内容や回答例ついてはこちらの記事で解説していますので、合わせてご覧ください!