近年の筆記試験は、部門に問わず設問がかなり類似しています。
そのため、過去問で対策していれば比較的簡単に解答を作成できるのですが、一方で似たような回答が多く出ることが想定されます。
他の受験者と似た解答だと、試験官にとっては印象に残らず、加点にならない可能性があります。
今回は、筆記試験で他の受験者と差別化できる加点ポイントと、減点になるポイントを解説していきます。
出題の傾向
まずは過去に出題された問題の、設問の一部をご紹介します。
こちらは令和元年の化学部門で出題された設問です。
(1)これからも化学産業が発展をつづけるために検討すべき課題を、技術者としての立場で多面的な観点から3つ抽出し、分析せよ。
(2)抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げて、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)解決策に関連して新たに生じるリスクとその対策について述べよ。
(4)(1)~(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。
課題抽出、分析、重要な課題、複数の解決策、リスクと対策、倫理、持続可能性についてです。
また下記は、令和3年の化学部門で出題された設問です。
(1)化学技術者の視点から、「脱炭素社会化」を推進するに当たり「エネルギー源の安定的確保」と「脱炭素社会化に伴うシーズ・ニーズの変化」などを多角的に分析して、3つの課題を抽出し、各々の課題を説明せよ。
(2)抽出した課題に関して要求事項と影響の重要度を考慮した上で課題を1つ挙げ、選んだ理由とその課題に対する解決策を3つ示せ。
(3)解決策を実行した際に新らに生じうるリスクを示し、それへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前問(1)~(3)の業務遂行に当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から留意点を述べよ。
こちらは課題抽出、分析(多面的に)、重要な課題(影響度考慮)、複数の解決策、リスクと対策(専門的)、倫理、持続可能性についてです。
問題の基本の構成は同じですが、令和3年の方がより詳細に細かい設問になっていることが分かるかと思います。
これまでの設問に、観点や条件を付けた形で出題されており、令和4年以降も従来の設問に条件設定をつけた形になると予想されます。
加点ポイント
高度な技術による解決策 < 根拠のある解決策
解決策として、最新の技術による提案をするパターンがあると思います。
例えば、機械学習やシミュレーションがその代表例で、最新の学会や論文でも最新報告事例が多くなっています。
その一方で、最新技術の中には根拠が明確になっていないもの、効果が明確になっていないものがあります。
解決策を行うことによる効果(数値を含め)を示す上では、根拠・効果が明確であることが必須条件です。
既存の技術で、上記が明確であれば十分解決策になり得ますので、必ずしも最新技術や高度の技術に触れる必要はありません。
現状、目標、ギャップを整理して、解決策を提示する
これは過去の記事でも何度か触れていますが、現状と目標(あるべき姿)を明確にした上で、その差分を埋める解決策を提示する、という流れが最もスマートで分かりやすいです。
どの設問でも使うことが出来る論法だと思いますので、ぜひ解答作成時には意識してみてください。
①従来は〇〇で目標は△△という状態である(ギャップを示す、問題を示す)
②そこで◇◇という解決策で具体的に実施する(ギャップを埋めることを提案する)
③解決策により、効果は〇〇で目標達成できる(評価を示す)
分析は数値化
設問によっては、「分析せよ」と指示されているパターンがあります。
解決策の評価については、数値を使うことでより具体性・専門性を上げることができます。
効率が〇%向上する、工程が△時間短縮するなどの数値提案が、その事例です。
最終的に「科学技術の向上」と「国民経済の発展」に貢献できるか
技術士法の基本となります。
「この3枚の解答通りに進めていくことで、「科学技術の向上」と「国民経済の発展」に貢献できるか?」を考えてみましょう。
3枚の回答の最後を書き終えてから問題文をすぐに読んでみて、設問と解答が繋がっているかを確認してみてください。
問題作成者は今の社会課題を解決してほしいと思っている
作成者は私たちに社会課題を解決してほしいと思っているので、それに応えることを意識しましょう。
私は「試験作成者と共感する」ことが最も重要かと考えています。
試験作成者はどんなことを問題から解決してほしいのかを読み取り、目標と課題に共感することを1枚目にしっかり行うことがポイントです。
ここさえしっかりできていれば、解決策以降が多少異なって減点になっても全体では得点することができます。
逆に課題設定が異なれば、ボタンの掛け違いが最初から始まっているため、途中で修復することは難しくなります。
最も重要なポイントの一つですので、ぜひ意識してみてくださいね。
減点ポイント
根拠が書かれていない
これは基本中の基本です。
意見はコメンテーター、根拠は専門家です。意見に説得力を持たせるためにも、根拠は必ずセットで記載するようにしましょう。
一般的な解決策を提示している
設問に「専門的な対策」と記載されていることから、「一般的な解決策」では加点にはならない可能性が高いです。
どういうことかというと、「CO2を削減する」という課題に対して、「省エネ製品を使う」という解決策は正しいのですが、一般的な回答です。
専門的な回答は部門によって目線が異なりますが、例えば、水素発電や燃料電池などがCO2削減の解決可能な技術です。
専門的な対策の回答が求められている以上、少なくとも後者のレベルの解決策を記載することが必要です。
さらに、それらの発電の具体的な点を説明してCO2削減効果を提案すると加点になります。
まとめ
【加点ポイント】
- 根拠のある解決策を示す
- 現状、目標、ギャップを明確にし、その差分を埋める解決策を提示する
- 分析は数値化して提示する
- 「科学技術の向上」と「国民経済の発展」に貢献できる解決策である
- 試験作成者と共感する
【減点ポイント】
- 根拠が書かれていない
- 専門的な対策を示すことができていない